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オルソケラトロジー

オルソケラトロジーとは、特殊なコンタクトレンズを就寝時に装用することによって、視力を回復させる新たな技術です。コンタクトレンズをつけるのは睡眠中のみであり、日中は裸眼で過ごせるため、メガネやコンタクトレンズをつけるわずらわしさから解放されます。 人間の角膜は、長い間コンタクトレンズを装着し続けることによって「くせ」が付きます。オルソケラトロジーではこの「くせ」の法則を利用します。角膜の中央を押さえつけることにより、角膜のカタチを調整して近視を緩和します。通常のコンタクトレンズがあくまでも装着している間だけ視力を矯正するのに対して、オルソケラトロジーでは角膜の形状を直接変えることにより、裸眼時の視力を矯正します。 ただし、オルソケラトロジーの効果は永続的なものではありません。レンズを外してから時間が経過すると、角膜についた「くせ」が元に戻ってしまい、視力が元に戻ります。この点が、効果が永続的に続くレーシックとの最大の違いです。角膜を削らないため、レーシックと比べればいリスクは格段に低く、対象年齢も広いため近年では多くの患者さまがオルソケラトロジーに取り組まれています。 オルソケラトロジーでは、一人一人の角膜の形状に合った専用のコンタクトレンズを装着します。日本人の角膜は欧米人のそれと比べると、中央部のでっぱり部分が小さいのが特徴なので、サジタルデプス(レンズの深さ)が浅いものを使用することが多いです。もちろん、個人差はありますので、個々の角膜の深さにあったレンズを利用することが大切です。

オルソケラトロジーの治療サイクル

就寝前に特殊形状のハードコンタクトレンズを装用して頂きます。高酸素透過性のレンズですので、お休み中にも角膜に酸素が行き渡ります。


睡眠中にコンタクトレンズの形状にそって角膜の形状が正常な屈折に矯正されます。

翌朝の起床時にレンズを外して頂きますと、角膜が正しい屈折状態に矯正されているために、お目覚め時から視力が回復した状態で日中を過ごしていただけます。就寝時には1に戻り、再度コンタクトレンズをつけていただきます。定期検診をはさみながらこれを繰り返します。また、コンタクトを外していると時間の経過とともに角膜の形状が元に戻り、矯正前の視力に戻ります。

オルソケラトロジーの歴史

オルソケラトロジーの歴史は古く、1950年代から1960年代には臨床的な試みが実施されてきました。その後実際に初めてアメリカでFDA(アメリカ食品医薬品局。日本の厚生労働省に相当)から認可を受けたのが1989年です。 その後日本にオルソケラトロジーが上陸したのは2000年。当初は就寝時にコンタクトレンズを装着することに対する安全性への疑問、視力矯正技術の一つであるレーシック技術の発展などもあって、しばらくはマイナーな存在でした。その後オルソケラトロジーの安全性が確認されると、レーシックで角膜を削る手術に抵抗のある方や適用外の方を中心に取り組む患者さまや取り扱うクリニックが増え、日本の医院でも自由診療の一種として施術を行う医院も増えております。

オルソケラトロジーの特徴

オルソケラトロジーの一番の特徴は手術を行わないということです。レーシックではレーザーを使って直接角膜を削るため、なんとなく手術に対して抵抗感があるという方もいらっしゃることでしょう。その点オルソケラトロジーはコンタクトレンズを使うだけですので、コンタクトレンズに抵抗のない方ならば比較的気軽に行うことが出来ます。もし効果がなかった場合にはレンズを外せば視力は元の状態に戻りますし、合併症状も出ません。 対象年齢にも違いがあります。レーシックのメインの対象年齢は20歳~60歳ですが、オルソケラトロジーはもっと上の年齢、あるいは下の年齢も対象範囲となっています。オルソケラトロジーは特に低年齢層の治療に向いており、中学生~高校生の視力回復には最適です。

オルソケラトロジーの流れ

適応検査を受けていただきます。

眼科検査を行います。もし検査で疾患が発見された場合は、その病気の治療を先に行い、改めて検査をします。コンタクトレンズを使っている場合は、検査の前にコンタクトレンズの使用を中止する必要があります。具体的な中止期間の長さについては、各医院にお問い合わせください。

詳しい説明をおこないます。

適性があると判断された場合には、オルソケラトロジーのメリットとリスク、費用などについての説明を受けます。その説明に納得し、治療を受けたい場合にはその旨を医師に申し出てください。

トライアルレンズの装着

医師の了解が得られたら、まずはトライアルレンズの装着を行います。トライアルレンズを装着してから2時間程度様子を見て、効果を検証します。効果が十分に見込めると判断された場合は、実際に治療に使用するレンズが処方されますので、それを受け取り、説明を受けて帰宅となります。

定期検診の受診が必要です。

装着を開始した後は、何度か定期検診を受ける必要があります。定期検診の間隔は医院によって違いますが、最初のうちは最低でも3カ月に一度、できれば毎月受診することをおすすめします。治療開始後半年が経ったら、その後は半年に1回程度の受診でOKです。また、急に見えづらくなった場合や、痛みがある場合などは、定期検診日でなくても受診するようにしましょう。

どれくらい回復するの?

オルソケラトロジーの効果が最大限現れるまで、2週間~3週間程度の時間がかかることがありますが、たいていの場合は数日後、早い場合には翌日から視力の回復を実感できます。特に子供や軽度の近視の場合には、効果が早く現れる傾向にあります。仮に視力が0.1程度の場合、1.0程度にまで視力が回復することが望めます。 ただ、効果が全く現れないということはまずないのですが、強度の近視の場合には、メガネやコンタクトレンズなしに生活できるレベルまでは回復しないこともあります。

メリット

一番のメリットは、手術が必要ないということです。オルソケラトロジーは原理的にはレーザーで角膜を削る手術と変わらないのですが、角膜を削らないため、安全度はレーシック手術と比べると高いといえます。また、治療を中止すれば視力が元に戻るため、レーシックのように失敗して後遺症がずっと続くようなこともありません。
費用もレーシックと比べれば割安です。医院によってレンズの価格は異なりますが、両眼を治療して、定期検診を受ける場合、初年度にかかる金額は大体15~30万円前後です。その後は年に1万~2万程度の定期検診代のみで済みます。長い目で見れば、使い捨てタイプのコンタクトを利用するよりも割安です。現在は保険診療の対象外ですが、もし将来保険が認められるようになれば、さらに安い価格で受けられるようになるかもしれません。 また、オルソケラトロジーには、近視を抑制する効果もあるといわれています。効果の大小についてはまだ詳しいことは分かっていないのですが、多少なりとも近視を抑制する効果があることは間違いありません。
レンズのケアも通常のコンタクトレンズとそれほど変わりがないので、ケアに時間を取られることもありません。

リスクとデメリット

オルソケラトロジーはレーシック手術と比べると非常に安全性が高く、ほとんどリスクらしいリスクはありません。眼圧や角膜強度が変化せず、最新のレンズならば酸素もきっちりと通すため、装着感も抜群です。強いてあげれば、コンタクトを外すと時間の経過で矯正前の視力に戻ることが欠点といえるでしょう。定期検診を行いながら、しっかりと習慣づけることが裸眼の快適さにつながります。 また、レンズの取り扱いが不衛生だったり、医師の指導に従わなかったりした場合には、通常のコンタクトレンズと同程度のリスク(感染症など)が生じます。レンズのケア自体はそれほど難しいものではないので、医師から一度説明を受ければ問題ないでしょう。また、ケア製品については必ず医師から指定されたものを使用するようにしましょう。また、場合によっては暗闇で光をまぶしく感じたり、にじんで見えたりするなどの副作用が出ることがあります。通常はレンズに慣れるにしたがってこれらの副作用は消えていきますが、あまりにも長く続く場合には医師と相談しましょう。